花コラム
花コラム 第49回:キンモクセイのプルースト効果
2021.9.1 第49回:キンモクセイのプルースト効果 煮物の匂いがすると、夕餉の団らんを思い出す。あの香水の香りをかぐと、昔の恋人が目に浮かぶ…。特定の匂い、香りが、それに結び付く情景や人、感情、記憶を呼び起こす現象をプルースト効果と言います。 キンモクセイはモクセイ科モクセイ属の高さ4mほどになる常緑小高樹です。9月から10月にかけてオレンジ色の小さな花を咲かせます。中国が原産の雌雄異株で、樹皮=写真左側=が犀(さい)の足に似ていることから「木犀」と名付けられました。白い花が咲くギンモクセイ=写真右側=の変種で、オレンジ色の花を金に見立てて、キンモクセイと呼ばれるようになりました。 キンモクセイは、春のジンチョウゲ=写真左側=、夏のクチナシ=写真右側=とともに、強い香りを放つ「三大芳香花」と言われます。別名は「九里香」。花の香りが9里離れた所まで届くという意味です。ジンチョウゲの別名は「七里香」ですので、キンモクセイの香りは、より強いことになります。 五感の中で嗅覚だけは、本能的な行動や喜怒哀楽などの感情を司る大脳辺縁系に直接つながっているので、より情動と結び付きやすいと言われています。 ところが、一定の年齢以上の人の中では、何とトイレを連想する人も少なくありません。ひと昔前は、キンモクセイは家庭や公園のトイレのそばによく植えられていました。トイレの消臭剤も、ほとんどがキンモクセイの香りでした。この花の強い香りがトイレの匂いを打ち消すと思われていたのです。このため、キンモクセイには「便所花」という、気の毒な呼び名を付けられたこともありました。 キンモクセイの香りは、今でも芳香剤、消臭剤によく使われますが、最近では以前ほどトイレ用に特化して使われなくなりました。トイレが水洗化されたので、あえて強い香りの消臭剤を使う必要がなくなったからです。時代の流れで、キンモクセイの甘く、爽やかな香りはフィルターを通さずに、本来の姿が評価されるようになってきたとも言えます。 新型コロナウィルスが拡大し、感染予防に心を砕く日々続きますが、マスク越しでもキンモクセイの香りを楽しめる季節になりました。この秋の体験が人それぞれ、新たなプルースト効果を生み出していくでしょう。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
フランスの作家マルセル・プルースト(1871~1922)の小説「失われた時を求めて」に、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した時、その香りで幼少時代を思い出す場面があることから、この名前が付きました。それでは、「秋の香り」キンモクセイ(金木犀)には、どんなプルースト効果があるのでしょうか?樹皮がサイの足に似ているから
日本へは江戸時代に雄株だけが渡来しました。雌株がないので自然には分布せず、挿し木によって庭木や街路樹として、北海道と沖縄を除く日本各地で増えていきました。9里離れた所まで香りが届く
香りと結びつく情動は?
キンモクセイの香りは、どんな情動と結び付くのでしょうか?秋に起こった忘れられない出来事、風景、人……。秋のイメージと重なって、ロマンチックな、もの悲しい思いを抱く人が多いかもしれません。トイレの香り?
キンモクセイの本来の香り
マスク越しでも香る季節に
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「日本の花を愛おしむ」(著者:田中修、発行所:中央公論新社)
※参考サイト
「日本薬学会 生薬の花 キンモクセイ」
「においと記憶 日医on-line 富田雅義」
「産経WEST『関西の議論』強烈だから香水、クリームで再来!? 1916/4/16」
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