花コラム
花コラム 第25回:キキョウは秋の花?それとも夏の花?
2019.9.1 第25回:キキョウは秋の花?それとも夏の花? 花はそれぞれ、咲く時期や期間が決まっています。この花期があるから、私たちは花を見て季節の移ろいを感じることが出来るのです。それでは、キキョウ(桔梗)はどんな季節を教えてくれるのでしょうか?
キキョウ=写真=は東アジアに広く分布する多年草で、直径5~7cmの透明感のある綺麗な星形の花を咲かせます。万葉の時代から親しまれ、数多くの詩歌にも歌われてきたキキョウは、日本を代表する花の一つと言えるでしょう。花言葉は「永遠の愛」「誠実」「従順」。恋人を生涯、待ち続けた若い女性に由来すると言われています。
キキョウは秋の七草の一つで、歳時記によれば季語は初秋。とくれば、キキョウの季節は秋になるはずです。古今和歌集=写真=に、このような歌が載っています。
ところが、このコラムを書いている夏の真っ盛りに花屋さんをのぞくと、キキョウも今が盛りとばかりに店頭に並べられていました=写真=。お店の人に聞くと、「6月頃から出回っていますよ」ということでした。それでは、キキョウは秋というよりも夏の花ではないのかという疑問がわいてきました。
野生のキキョウは絶滅危惧種に指定されていますが、園芸では品種改良が重ねられてきました。5月下旬から咲く「五月雨桔梗」が売り出されたのは、もう何十年も前のことです。五月雨桔梗が普及して、キキョウの咲く時期が早くなると、今度は「イメージ通りに秋に咲くキキョウを見てみたい」という声が出てきました。そこで、遅咲きの「晩生桔梗」という園芸種が作出されました。言わば、元の季節に戻されたということかもしれません。 促成・抑制栽培の普及や品種改良の技術の向上で、花や作物の出回る時期はある程度は変えられるようになりました。このため、時には花や作物にまつわる季節感と実際に出回る時期にずれが生じるようになりました。
さらに、暦の違いが季節感のずれにも影響しています。歳時記は旧暦を使っていた江戸時代から俳諧や俳句の季語を集めたものです。現在の新暦と旧暦にはずれがあるので、今の感覚では「おやっ」と思うような季語も少なくありません。枝豆は夏にビールを飲みながらつまむイメージが強いのですが、歳時記では秋の季語。西瓜(すいか)や朝顔も夏ではなく初秋の季語です。
私たちは、四季折々の自然の変化に時の移ろいを感じてきました。その自然も、地球温暖化などで変わりつつあります。季節感もまた、次第に変わっていくものなのでしょう。 ※参考図書 ※参考サイトプレミアムフラワーの花コラム
日本を代表する花の一つ
秋を象徴する花
〈秋近う野はなりにけり白露の置ける草葉も色変わりゆく 紀友則〉(意訳:野原には秋が近づいている。白露を浮かべる草葉の色も変わっていく)
実は、この歌にはキキョウの名が詠みこまれています。「秋近う」の「きちこう」です。桔梗は漢名で、古くは音読みして「きちこう」と呼ばれていました。それが転訛して「ききょう」という名前になったそうです。歌の世界でも、キキョウは秋を象徴する花になっていたということでしょう。秋ではなく夏の間違い?
五月雨桔梗に晩生桔梗
こうして、キキョウは晩春から初秋にかけて長い間、楽しめる花になりました。花の季節感と出まわる時期にずれ
新暦、旧暦の違いも影響
季節感も次第に変わっていく
◇
「育ててみたい山野草」の「キキョウ」の項(執筆:冨澤正美、発行所:日本放送協会行)
「季節を知らせる花」(文:白井明大、発行所:山川出版社)
「花の名随筆9 九月の花」の「キキョウは秋の花?」の項(執筆:柳宗民、発行所:作品社)
「美しい花言葉・花図鑑 彩と物語を楽しむ」(著者:二宮孝嗣、発行所:ナツメ社)
「キキョウとは - 育て方図鑑- みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「古典・詩歌鑑賞」
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