花コラム
花コラム第90回:シバザクラ~妻への思いが込められた“花の絨毯”
プレミアムフラワーの花コラム
第90回:シバザクラ~妻への思いが込められた“花の絨毯”
2025.03.1
記録的な大雪に見舞われた冬がようやく去り、花の季節が訪れました。全国各地の公園や野原、あぜ道、庭先などで色とりどりの花が芽吹き、咲き始めました。
どんな所でも、どのような咲き方でも、花にはそれぞれの美しさがありますが、中でも地面いっぱいに絨毯を敷き詰めたように咲く姿は絶景です。シバザクラ(芝桜)は、そんな“花の絨毯”の代表的な花です。
芝のように広がって咲く、桜のような花
ハナシノブ科の多年草のシバザクラは4月から5月にかけて、芝のように広がって桜のような可愛い花を咲かせます。この見たままの姿が花の名前になりました。色は白、ピンク、青、藤など様々、品種によって濃淡が異なり、バラエティに富んでいます。
名所は沖縄を除く全国各地に
シバザクラは暑さは苦手ですが、寒さには強く、名所は沖縄を除く全国各地に散在しています。北海道網走郡の「ひがしもこと芝桜公園」、埼玉県秩父市の「羊山公園」、山梨県南都留郡の「富士本栖湖リゾート」、愛知県北設楽郡の「茶臼山高原」=写真=、兵庫県三田市の「芝桜園 花のじゅうたん」、広島県世羅郡の「世羅高原農場 花夢の里ロクタン」……。
※写真は般財団法人・茶臼山高原協会のホームページから転載
個人のお宅も名所に
名所の多くは公共団体やリゾート会社などが管理しているものですが、宮崎県新富町の公式ホームページのアーカイブを見ると、毎春、個人のお宅のシバザクラが写真=上は2010年、下は2016年=とともに紹介されていました。
「黒木敏幸さん宅の芝桜がいよいよ見頃を迎えます。ピンクのじゅうたんを敷き詰めたような鮮やかな光景が皆様のお越しをお待ちしています。」「黒木さん宅周辺の臨時駐車場では地場産業振興会によります地場産品の販売中です。」
花畑に失明した妻への思いを込めて
珍しいなと思って調べてみると、個人のお宅が観光名所になったいきさつが地元の新聞やテレビなどで紹介されていました。
酪農を営んでいた黒木さんが自宅の庭にシバザクラの花畑を造ったのは30数年も前のことです。社交的だった妻の靖子さんが失明し、落ち込むことが多くなりました。黒木さんは「自宅にシバザクラの花畑を作れば、多くの人が来てくれて、妻の話し相手になってくれるかもしれない」と思い立ち、一から造園を勉強。失敗を重ねながらも、最終的には約4千㎡の綺麗な“花の絨毯”を造りあげて公開、年5、6万人が訪れるようになりました。
一人で広大な畑を管理
夫婦愛が結実した花畑を見てみたいなと思いましたが、新富町のホームページは2017年以降は黒木さん宅のシバザクラの紹介記事を載せていません。当時、87歳だった黒木さんは「人には引き時というものがある」と考え、公開30年の節目の2017年に公開したのを最後に造園をやめられたそうです。土壌作り、苗作り、水の管理、雨で流れた土の補充…。一人で広大な地に花を絨毯のように敷きつめて咲かせるのには、大変なご苦労があったのに違いありません。
黒木さん=写真上の左側=は宮崎ケーブルテレビのインタビュー(2017年4月19日放送)で「花が人を呼んでくれました。」と話され、7歳年下の靖子さん=同右側=は黒木さんに「心から、ありがとうございました。」と感謝されていました。
※写真は宮崎ケーブルテレビ映像から転載
※同テレビ局の黒木さん夫妻のインタビュー映像(https://www.youtube.com/watch?v=oQYxCfzQhIU&t=455s)
花づくりに思いを馳せて鑑賞を
花との出会いは一期一会。今では黒木さんの花畑を見ることは叶いませんが、今年の春も全国各地の花畑が私たちを楽しませてくれることでしょう。すべての花畑には作り手それぞれの思いが込められています。鑑賞する時は、花を愛でるだけでなく、花づくりに思いを馳せることも忘れないようにしたいと思います。
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※参考サイト「みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「農園ガーデン空」
「にっぽんまんなか紀行」
「新富町ホームページ」
「宮崎日日新聞」
「ZEKKEI Japan」
「花の名所一覧表」
「宮崎ケーブルテレビ」