花コラム
花コラム 第70回:クチナシ~好きな匂いとなるらしいのを知った
第70回:クチナシ~好きな匂いとなるらしいのを知った 2023.6.1 《重苦しい梅雨どきを、忘れず待っていたらしく、くちなしの花が咲く。(中略)風の運ぶ香がよくて、風のこころとまじりあって、私の好きな匂いとなるらしいのを知った。》 ♫くちなしの花の 花のかおりが 旅路のはてまで ついてくる…。 アカネ科クチナシ属のクチナシは、中国、台湾、日本では静岡以西に分布。高さ1~3mの常緑樹で、6月から7月にかけて直径5、6cmの5弁から6弁の純白の花を咲かせます。八重咲きの八重クチナシ(オオヤエクチナシ)もあります。春から夏にかけては色とりどりの花が咲きますが、清楚な美しさではクチナシは際立っています。 それにしても、クチナシとは奇妙な名前です。口が無いって、どういうことでしょうか? 花言葉は「とても幸せです」「喜びを運ぶ」「胸に秘めた愛」「優雅」。欧米では男性が女性をダンスパーティに誘う時、クチナシの花を贈ることが多いそうです。贈られた女性の気持ちが花言葉になったとも言われています。 クチナシは嫁入りの口(嫁ぎ先)がないのに通じることから、地方によっては「女の子のいる家は植えてはいけない」と言い伝えられました。もっとも、今では婚姻形態が変化したこともあって、この言い伝えはほぼ途切れました。 かぐわしい香り、美しい花姿に相応しい名前はいくらでもあるはずなのに、よりによってクチナシとは……。誰がつけたのかは知りませんが、この命名はセンスがあるとは思えません。クチナシは名前で損をしている花と言えるでしょう。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
昭和を代表する俳人・中村汀女は随筆「八重くちなし」で、このように記しています。これからの季節、クチナシは視覚だけでなく嗅覚も楽しませてくれます。三大香木の一つ
渡哲也のヒット曲「くちなしの花」(作詞:水木かおる)に歌われるように、クチナシは甘くて強い芳香を放ちます。ジンチョウゲ=写真左側=、キンモクセイ=同右側=とともに三大香木に数えられていますが、クチナシの魅力はそれだけではありません。際立つ清楚な美しさ
花に口が無いって、どういうこと?
クチナシは秋に赤みがかった橙色の実=写真左側=をつけます。この実が熟しても割れないことから「割れる口がない」、転じて「口無し」「クチナシ」と呼ばれるようになったとされています。
ちなみに、将棋盤や囲碁盤の足=写真右側=はクチナシの実の形をしています。将棋や囲碁の対局では、周囲からの助言は厳禁です。「口出し無用」という意味が盤の足に込められています。欧米ではイメージ抜群の花
西洋ではイメージが抜群に良い花ですが、日本では趣きが異なります。語呂合わせでいかようにも
また「死人に口無し」のことわざを連想してか、何となく悪いイメージを持たれることもあるようです。
しかし、一方では「朽ち無し」と書けば「朽ちることがない」という意味になるので、縁起物として扱われることもあります。要は語呂合わせ、いかようにもなる訳です。
よりによってクチナシとは
汀女はクチナシの花の香りをかいで《好きな匂いとなるらしいのを》知りました。逆に、花の名前を聞いてマイナスイメージを抱き、《好きな花とならないらしいのを》知る人がいれば、その人にとっても花にとっても残念なことです。◇
「花の名随筆6 六月の花」(監修:大岡信、田中澄江、塚谷裕一、発行所:作品社)の「八重くちなし」(中村汀女)
「花と草の物語手帳」(著者:稲垣栄洋、発行所:大和書房)
「みんなの趣味の園芸」(NHK出版)
※参考サイト
「葉は言葉-由来」
「Pex クチナシの花はプレゼントしてはいけない!?」
「Oggi.jp 『クチナシ』の花由来とは?」
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